竹野武士

渡辺竹清先生


あれは、いつの事やったろうか?網代編みの巨匠、渡辺竹清先生の工房にふらりとお伺いさせて頂いた時に、


「これ、持って帰り...」


そう言うて頂いたのが縄目模様も渋い煤竹筒に入った、先生の手削りの携帯箸やったがです。筒の口部分は丁寧に籐巻きされています。スッーと中のお箸を引き出してみたら何と無骨な印象の煤角箸ながです。これはかなり太い煤竹やったに違いないがぞね。竹材の関係で、これ以上の太さの竹箸は量産できないと言う竹虎の極太箸、横綱うるし箸よりも更に若干幅が広めながぜよ。少しだけ下げた竹節の表情も格好がエイちや。普通を好まない男が使う角箸の雰囲気満点ながです。


渡辺竹清作、煤竹携帯箸


この携帯箸は、丸い竹筒に入れられちゅう分かさばるので、鞄などを持ち歩く時でないとなかなか携帯できないという事があって実は出番は多くは無いのです。けんど、いつも身近に置いて眺めていたいと言う、この携帯箸の最大の特徴のひとつが「鍔(つば)」ぞね。


最初、先生が棚から出された時に、まるで美しい小刀のように見えたのです。煤竹の鞘(さや)に刀のような煤竹箸と鍔が収まっちゅうように思えたきです。もし、これが刀やとしたら渡辺先生に帯刀を許された竹武士という事やろうか。けんど、さすが先生は考えられちゅうぜよ、武士は武士でもこの箸の荒々しやきに野武士じゃおまんは野武士になれ、そう言うてくれゆうがです。



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