続・オエダラ(オイダラ)箕

オエダラ(オイダラ)箕


イタヤカエデ、藤、桜、根曲竹を使う箕と聞いくとカンの良い方は寒い地方だとすぐにお分かり頂けます。根曲竹は寒い地方にしかありませんし、カエデも温かい地方の樹木は素材が柔らかくて使えません。このオエダラ箕は秋田太平山麓の一部の集落でだけ作られきたものです、太平山源正寺というお寺が近くにありますけれど「大江源正」→「大江平」→「大平」→「太平」→オエダラ(オイダラ)と呼ばれるようになったようです。


オエダラ(オイダラ)箕


さて、純白のイタヤカエデを使うオエダラ箕に対して、この飴色に変色した箕は又どこか別の地域で作られる箕かと思われる方もいるかも知れません。しかし、実は全く同じ箕で経年変色してこのような成熟した色合いになっているのです。この30年ブログでも、よく青竹細工が渋く変色していくお話しをさせて頂きます、それと同じようにイタヤや藤など自然素材の素晴らしい一面です。


オエダラ(オイダラ)箕


西日本から遠く離れていますが、これだけ数種類の素材を使う箕作りは桜皮と蓬莱竹など複数の山の素材を使う箕にイメージが重なります。また、オエダラ箕には桜皮で縁起の良い矢羽の形が飾りにされていました。


オエダラ(オイダラ)箕製造


そう言えば、箕は十日えびす等で福をすくう「福箕」が縁起物としても扱われています。この矢羽根模様が何故されているのか訊ねるのを忘れましたけれど、箕が単なる農具として使われていただけでは無かった事がうかがい知れます。


イタヤカエデ細工


箕は風の力を利用して米から籾殻を吹き飛ばすなど選別に使う道具です。その用途から来たものだと言われますが病人を箕であおいで身体についた悪いモノを消し去る習慣や、箕を立てた内側で食事をして不幸から自分達を守るという言い伝えがある等、箕にはある種の民間信仰のようなものがありました。箕を自宅入り口に立てておくと来客を拒む意味があるとも聞きます、つまり箕がある種の結界のような役割をしてきたのです。


土佐箕


オエダラ箕に入れられた桜皮を見た時、竹とは全く違う遠い山の素材で編まれたものなのにどこか同じものを見た気持ちになりました。


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