資料館級の竹細工あり

土用干し用エビラ


エビラは、今年の土用干しシーズンも沢山の方にご愛顧いただいた竹編みのひとつだ。「エビラ」と検索するとゴジラと対決する怪獣が、まず出てきて、それほど一般的な製品でない事が分かる(笑)。実は城跡が好きで石垣ファンなのだが、四国の覇者とも言われる長宗我部元親の岡豊城跡には高知県立歴史民俗資料館があり、実はエビラはここに何枚も収蔵されている。


高知新聞、エビラ


そんな事を思い出したのは、今月初めに地元の高知新聞で懐メロや民具で認知症予防という記事が掲載されていたからだ。こちらに写っているのは別の資料館が保管されているエビラだった。


エビラ


まさに、資料館に収められているレアな竹細工という訳だが、何と竹虎では当時の大きなサイズだけでなく、都会に向けたハーフサイズまで製作している。


土用干し、竹ざる


資料館に収められている籠は、年期が入っていい味を出しているから、年に一度は見学させていただくようにしている。何度も行っても、その都度新しい発見があり本当に楽しい。そして、そんな歴史のある竹細工が現代でも作り続ける事ができて、人様の役に立てている事が素晴らしいと思っている。





竹ざるで味噌作り?伝統のミソバラ

古いミソバラ


倉庫に仕舞われていた網代編みの竹ざるは大迫力だ。普通に生活していたら、まず目にする事のない大きさで、直径が一つは3尺(約90センチ)、もう一つは4尺(約120センチ)もあるから凄い。こんな平らな竹ざるが何に使われていたのかと言うと、実は味噌作りだ。蒸した麦を冷ますのに、この大きな竹ざるを使う、そして冷ましてから麹菌と混ぜるのだが、薄い竹ヒゴを網代編みした細かい編み目にその家独特の菌が生きているから、同じ地域でも各家庭それぞれに風味の違う味噌が出来ていた。


寿司バラ


それにしても、この大きさには自分でも面食らってしまう。前に、宮崎県の寿司バラと言う竹笊を最後の職人さんから頂いたお話しをした事がある。寿司飯を竹編みのザルで作るなんて、味噌作り同様に馴染がないと少し意外に感じてしまうが、この寿司バラも結構な人数分を作る事ができるサイズであるものの、内側は1.3尺(約40センチ)しかない。


寿司バラ


つまり、3尺(約90センチ)、4尺(約120センチ)サイズの竹ざるがいかに大きいかお分かり頂けるかと思う。竹虎では定番としている2尺(約60センチ)だって、沢山の梅干や野菜を干すのには都合がよいけれど、都会に暮らす方の中には、もしかしたら置き場所に困っている方もおられるかも知れないなどと想像する(笑)。このビッグサイズの竹ざるが、どうやって使われてきたのか?近いうちに皆様にご紹介したいと思っています。





見逃すと損する、国産竹ざる大集合

竹虎の国産竹ざる


竹虎には、それこそ小ぶりで可愛い直径21センチのザルから、梅干し作りの土用干しには一番多用されている60センチと大型の国産竹ざるまでいろいろと取り揃えている。竹材も虎竹、真竹、淡竹、孟宗竹、スズ竹、篠竹など一口に竹といっても、これくらいの種類が使われているし、編み方も網代編み、四ツ目編み、ゴザ目編み等技法も色々だ。


国産竹ざる60センチ


サイズも分かれているので選ぶのに迷ってしまわれそうなら、国産竹ざるをオススメする。高知で昔から編まれてきた網代編みの竹ざるで、伝統的に主に孟宗竹を使って作っている。古老の竹職人はザルとは呼ばず「サツマ」と言うから、恐らく技法は鹿児島から伝えられたに違いないと思う。60センチが大きい場合には、40センチのサイズをお選びいただくと良い。


ふたえばら


国産四ツ目編竹ざる


ふたえばらと言って裏面に六ツ目編みの補強が入った竹ざるもあるけれど、意外と少なくなって皆様もご覧になる機会の少ないのは四ツ目編の竹ざるかも知れない。


日本製四ツ目竹ざる


通気性の良い四ツ目竹ざるには、見た目の美しさまで考慮して真竹を磨いた竹ヒゴを使ったり、日本唯一の虎竹で編んだりしたワンランク上のクラスもご用意している。そうそう、竹ざるに「国産」とわざわざ付けているのは、やはり海外製のモノとは区別していただきたいからだ。国産と付いていない竹ざるも、竹虎の場合はもちろん日本の竹にこだわり国内で製造された物だけなのでご安心ください。





梅雨の晴れ間に土用干し、国産えびらが大活躍

国産竹製エビラ製造


梅雨が上がったかと思えば、まだ上がりきっておらず、今朝は天気が良くて気持ちいいなあと思いながら工場に来てみれば、急な雨で竹材が濡れてしまったりする。このような長雨の中でも青空の広がった時を見逃さないようにして、梅干しをエビラ等にのせて天日干しするのが土用干し。まさにシーズン真っ盛りとあって、エビラ用の木枠も少しだけ製造するようにした。

日本製えびら


エビラは太く丈夫な孟宗竹を網代編みした竹材に杉材で作る木枠をはめ込んで製作している。竹編みには、もちろん防虫剤やカビ止めの薬剤などは使わず、そのままの生の竹を使っているので湿度の高いこの時期か製造にも随分と気を使っている。


土用干し用エビラ木枠製造


土用干し、梅干し


それでも、お客様からご指摘をいただく事があるので有難い。元々は養蚕農家で使用していた蚕棚が原型なので、すっかり途絶えていたものを復刻して以来、その都度工程を見直し少しづつ良い物にブラッシュアップさせている。このように沢山の梅作りをされる方を拝見すると、そんな職人たちの努力が報われているように感じて嬉しい。





大型の国産竹ざる

竹ざる


古い竹ざるがある、かなり大きなもので現在ではほとんど編まれていない竹細工だ。竹虎で作る国産竹ざる60センチは尺に直すと2尺だが、こちらの竹ざるは更に大きく3尺(90センチ)と4尺(120センチ)もある。このような大型の竹細工は核家族が進み一世帯の人数が少なくなった近年使われる事もなくなり、従って職人さんもいなくなってしまっている。


ところが、このような骨董品と言われても仕方ないような竹編みにも、忘れた頃にポツリと求められてお声がかかる事があるのだ。また、悪い事にこのような竹ざるを自分が個人的に復刻したくて仕方なくなる。別注品なので時間はかかる、2か月だろうか?3ヶ月だろうか?もう少し先になるだろうか?いやいや、来年である。なぜって、この竹ざるをご覧いただくと分かるけれど縁に使う太く長い孟宗竹すら今では材料がない。


日本製竹ざる


もちろん竹林に行けば竹は沢山生えているけれど、今は旬が悪いから伐採しない。秋以降に竹を伐りだしてからの製作となる、しかし既に予定されている仕事があり、余分な竹材の確保が必要な別誂えは後回しになって、どうしても年内には間に合わない。竹籠のや竹ざるの修理や別誂えのお問合せの方は、こうやって時間のかかる事をどうかご理解いただきたい。「時間がかかりすぎるのでキャンセル」なら最初から日本製竹ざるはあきらめて、別素材で代用した方が良さそうだ。





良い事づくめの乾燥野菜

フードロスにエビラ籠


自家製梅干しを作られる方が梅雨の晴れ間に行う土用干しは、梅干しの色づきが良くなり美味しく出来あがるので欠かせない工程であり、その時にお使いいただく竹編み平籠(エビラ)を竹虎では連日製造を続けている。どこの農家さんでも蚕を飼っていた時代があり、その名残で蚕棚として使用されていた古いエビラを納屋から出してきて、干し大根や干し椎茸作りに庭先に並べられている光景は普通だったが、作っている職人はさすがに一人もいなくなっていた。


野菜干し、食品ロス


復刻して良かったと思うのは土用干しだけでなく、近年の食品ロス・フードロスとか言って、昔の日本なら当然の食べ物を大切にする精神が見直されて干し野菜、乾燥野菜などにチャレンジされる若い主婦の方が増えた事だ。


干し野菜


しかし、乾燥野菜は「もったいない」からと言う理由で作るのではない。もちろん、食材が長持ちするのだが、とにかく何と言っても一番なのは野菜が美味しくなるのだ。天日干する事により旨味が増し、しかも栄養価が凝縮されるから素晴らしい。


フードロス、干し野菜


そして、忙しい主婦の方には嬉しいのが調理時間が短縮できる事。干し大根など良く食していますけれど味の染み込みが早く、食感もしっかりして食べ応えもある。


乾燥野菜


調べてみると書籍なども沢山あって、実は色々な野菜を干して楽しめるので関心のある方はチャレンジして欲しいと思っている。


国産竹ざる60センチ


乾燥野菜作りに関心を持たれる方にオススメなのはエビラだけではない。土佐伝統の孟宗竹を使って網代編みする国産竹ざるは定番の60センチと、小ぶりな40センチを編んでいる。田舎では90センチあるいは更に大きな120センチサイズを求められる事もあるが、都会のご家族なら40センチもあれば十分かも知れない。


乾燥野菜用竹ざる


エビラ干し野菜


そうそう、60センチ×45センチのエビラ(小)にはベランダで吊るして干したいというお声から紐を通せる穴を開けている。





伝統の国産竹ざる60センチで土用干し

国産竹ざる


網代編みされた国産竹ざるは今やちょっと貴重な存在ではないかと思っている。竹を油抜きせずに青竹のまま使う竹編みの事を「青物細工」と呼ぶが、少なくなった青物の中でもザルを作る職人はかなりレアだ。ホームセンターや荒物屋に行けば安価な輸入品があるし、竹ざるに代替する製品もある。


万屋の国産竹ざる


十数年前の写真を探してみると網代編みの国産竹ざるは職人の工房にも常に積み上げられていた。普通に思っていた、あの竹ざるも今こうして見たら何と熟練度の高いことか!


干しシイタケ


そして、その竹ざるは毎日のように野菜を干したり、魚を干したりと生活の一部として使われていた。


日本製竹ざる


孟宗竹を使って編み込む、高知の伝統を継承した竹ざるを若い世代に繋いでいく事ができるのか?実はその答えは、この30年ブログをご覧になられているユーザーの皆様ひとりひとりが握っている。


土用干し、梅干し


色々な価値観があり、暮らし方も多様化していく日本で昔から続いてきた竹文化にも一筋の光が当てられたら嬉しい。日本の竹を使って、日本の職人が日本の技で編んだ竹ざるで今年も真っ赤な梅干しが美味しくできる事を願っている。



続・孟宗竹の材料取りと土用干し

お客様の土用干し


こちらのお客様から以前お送り頂いた画像をご覧いただきたい。このように土用干しも上級者になると圧巻だ、丸ざるの大小や葦スダレまで使って大量に干されている。一体、今年はどんな様子が届くのだろうか?毎年季節になると、お客様からの梅便りを社員一同が楽しみにしている。


エビラ網代編み素地


伝統的にエビラ籠の網代編みの竹材には孟宗竹を使っている。エビラは養蚕が盛んな頃に蚕棚として何百枚、何千枚と作られていたものなので、孟宗竹なら身近にあるし、厚みのある身部分は何枚にも竹ヒゴが取れるという事でエビラの素材として定着したのだ。


土用干し、梅干しg


竹ヒゴが桃色に染まる頃、土用干しされた梅干しは色合いも綺麗に、そして美味しく出来あがる。


野菜干し


忘れてはいけないのが野菜干しでの活用だ。田舎では当たり前のように作っている干し野菜も、近年の食品ロスなどで大いに注目されているので良い傾向だと思う。野菜を干せば、長く保存もできるようになるし、美味しいく栄養価も高まるので良い事づくめである。


孟宗竹林


今どきの孟宗竹の竹林に入ると、この前まで筍だったものが既に20メートルを超える高さに成長していて、つくづく竹の驚異的なパワーを感じずにおられない。


切断した孟宗竹


サイズに切断した孟宗竹を割ってヒゴ取りをしていく。


竹ヒゴ、竹虎四代目(山岸義浩)


乾燥しているように見えても、長雨が続くとやはり水分が湿気を呼ぶのだろうかカビの原因となるので竹の扱いは本当に大変だ。


竹ひごのシミ


孟宗竹のシミ


竹質の低下はここ十数年のことなのだが、孟宗竹を割ってヒゴにしてみると今まであまり気にならなかったシミが随分と多い。虎竹(ハチク)の色づき少なさ、真竹のテング巣病による害虫への抵抗力の低下に続いて、孟宗竹も温暖化による竹質の変化が顕著になってきているのを感じている。



孟宗竹の材料取りと土用干し

エビラ籠


さあ、ソーシャルイノベーションサミットばかり言っていられない。帰国して早速今日はエビラだ、元々養蚕の盛んな頃に蚕棚として使われていたが、用途がなくなり野菜干しなどに転用されるようになった物だ。先日も農家さんの庭先で、当時の品と思われるエビラを使っているのを見かけたから随分と大切にされている。幅が90センチ、奧行き60センチのサイズが基本だ、しかし普通のご家庭用としては少し小振りな方が良いので幅60センチ×奧行き45センチのハーフサイズも製作している。


竹編み平籠竹ヒゴ


エビラの底部分は通気性と吸湿性に優れた網代編み、あるいは四ツ目編の竹材が使われる。高知では他の地域ではあまり編組細工には敬遠されがちな孟宗竹を伝統的に用いられてきた。硬く、加工しづらい面もあるけけど厚みのある身部分からは竹ヒゴが数枚取れるという利点もある。


エビラ竹ひご


孟宗竹は淡竹や真竹に比べて筍が生えるのが早い。筍を育てる養分を蓄える竹を狙って害虫が来るので、孟宗竹の伐採時期は一番早くて晩秋には終わっていなければならない。


エビラ竹素材


伐採して保管して置いた竹でも、湿度や気温の高くなる時期になるとカビてしまうため例年早めに竹ヒゴを取って乾燥させておくようにしている。


孟宗竹加工、竹割


3月21日の30年ブログ「孟宗竹のシミ、竹林の荒廃、竹の開花、そしてテング巣病」で、温暖化によって巨大化している孟宗竹の話をしたけれど、前はあまり見られなかった竹ヒゴへのシミが多くでており今年は歩留りが良くない。


竹ヒゴ取り


有難い事にエビラはご家庭で梅干しを漬けられる主婦の皆様に高い評価をいただいている。毎年、土用干しの様子を届けてくださる方もおられて見ているだけで楽しくなるけれど、全国にはこれだけ懸命になって梅を漬ける方がおられると言う事なのだ。


土用干し、エビラ


もちろん、ご家族のために作るお袋の味、安心安全は当たり前だから、道具も顔の見える国産をお選びされる。そんな方々のご要望に応え続けたいと思えば、良質の孟宗竹を生む竹林は欠かせない。





通気性抜群の国産四ツ目竹ざる60センチ

四ツ目竹ざる60センチ


昔から2尺竹ざるはサイズ的に使い勝手が良く、野菜を干すにしても、穀物を入れて運ぶにしても一番多用されてきた竹ざるだ。尺という単位は一般的には馴染みがないが、2尺=60センチ、つまり竹虎でもイチオシの国産竹ざる60センチがその大きさだ。最近では都会のマンションのベランダなどでご使用いただく方も増えたので1.3尺サイズ(1.3尺=約40センチ)の竹ざるも定番としてご用意している。


国産四ツ目竹ざる60センチ、竹虎四代目(山岸義浩)


日本国内で竹ざるを編む職人自体が少なくなり、流通されている多くは海外製のものが主流になっているので、国産にこだわる自分たちは「国産」表記を意識するようになった。そんな国産竹ざるでも四ツ目編の竹ざるはほとんど見かけない。特に60センチサイズのような農家さんや田舎の民家で愛用されてきた大きなサイズは皆無だ。


日本製四ツ目竹ざる60センチ


実は竹虎でも竹ざるは網代編みばかりで、四ツ目は久しぶり。抜群の通気性の良さの編み込みの竹ヒゴを全て磨いて美しく編み上げている。


日本製四ツ目竹ざる60センチ


四ツ目竹ざる60センチ


国産四ツ目竹ざる60センチ


竹ひごの見事な経年変色が楽しみな国産磨き四ツ目竹ざるだから、編み上がった今も綺麗だが、まだまだこれからが本当の美しさになっていく。