昭和36年10月13日高知城追手門にて

竹虎慰安旅行、昭和36年10月13日高知城


今から50年以上も前の話ですぜよ。昭和36年(1961)10月13日(金)の高知は秋晴れのエイ天気、絶好の行楽日和となって竹虎の社員一同にとっても、こじゃんと楽しい、思い出となる一日やったがです。自分の生まれる2年前の事ですぞね。


当時は、社員一同が揃って慰安旅行に出かける時代、60名を越える社員のおった竹虎も折りに付け大型バスを借り切って、あちらこちらへと出掛けて行きよりましたぞね。高知城の追手門で撮られた写真は、そんな旅の一枚。若かった父や叔父、叔母、祖父や祖母も見える、近所のやんちゃなお兄ちゃん、優しくしてくれた職人さんたち、皆が見慣れない余所行きの精一杯のお洒落をして写っちゃある。


当時の高知県の道路事情が良く分かりますろう?今なら高速道路でアッと言う間につく高知市内には、須崎市の西の端にある虎竹の里からは、曲がりくねった細い山道を、いくつも越え、観光バスに何時間もゆられて、ようやく辿り着くような、日頃来ることは、あまりない様な都会であり、そして高知城やったがです。だから皆がネクタイしめて背広を着て、こうやって揃うて写真を撮っちゅうがですぞね。


この写真は自分の大好きな人達が沢山写った大好きな一枚。いつも額縁に入れて飾ってありますけんど、今日は今年最後の日、朝から改めてお一人、お一人のお顔を見直しよります。皆様の働きがあったお陰で今の虎竹の里があり竹虎がある。大恩ある先人の皆様に、この一年の感謝の気持ちをお伝えしたいがです。そして、そのお顔から自分の行く道を聞きたいがです。


ボクは、竹のように真っ直ぐですろうか?ボクは、竹のように根を張れちょりますろうか?ボクは、竹を愛せちょりますろうか?


お一人、お一人の職人さんに訊ねる時、ボクは、お菓子片手に工場を歩き回りよった幼い頃に戻っちゅうがぜよ。


渡辺竹清先生、本煤竹の大迫力

渡辺竹清先生煤竹パーティーバック


今年も渡辺竹清先生のパーティーバックを手にする元日が近づいてきましたぜよ。パーティーバックと言うても、自分が使わせて頂くのは少し格が違うぞね。先生がニューヨークにある有名宝石店T社のお仕事をされている時に、デザイナーの方とのやり取りで何点か試作した作品の中の一つ、祖父が先生より譲られてから、ずっと仕上げられる事なく置かれてあったものを、金細工の作家の方に特別にお願いして金具を製作いただき、改めて渡辺先生が美しい籐巻きをして仕上げて下さった思いのこもった逸品です。


さて、先日は先生の工房に久しぶりに遊びに行ったがです。11月のニューヨーク訪問の際に見た宝石店T社の報告をさせてもらいますと、立ち上がられて棚を開けて取り出して頂いただいたのが、最高の煤竹を使い創作された大迫力の二点やったがです。


煤竹網代パーティーバック


漆を厚く塗り重ねたり、金粉などの装飾をする竹編みは、それは、それで美的価値やファッション性の多様化もあるかと思うので、自分は全く否定する事もありませんけんど、この長い風雪に越えてきた煤竹の迫力を目の当たりにしたら、これ以上足したり、引いたりする事は何一つ無いと思ってしまうがぜよ。


渡辺竹清作煤竹パーティーバック


やはり本物はシンプル、そのまま、あるがままではないですろうか。渡辺先生は100年もの長きにわたり人様のお役に立ってきた煤竹に、ご自身の作品を通して新しい次の100年の命を吹き込みたい、作品にして誰かに手にして頂くことにより竹は生まれ変わる、そう話されちょった事があるがですが、まさに、この堂々とした長い年月超えてきた煤竹の色艶は、巨匠と呼ばれる最高の技により蘇っちょります。これからの長い長い命を、このままで繋いでいくがですろう。


炭化竹新利用の研究 その2

過熱水蒸気処理装置


炭化竹の新利用と言うちょりますが、実は「炭化竹」という言い方は間違えちょりますぞね。見た目は自分がよく目にする炭化窯のように見えるのですが、実は技術的に大きく違うていて、竹は炭化加工すると80~90%が炭素カーボンとなり、こちらの研究センターで開発されているプラスチック製品などへの混入は、かなり難しくなるそうながです。


過熱水蒸気処理された竹


それでは、一体この炭化窯のような装置は何なのか?聞いてみますと、これが過熱水蒸気処理装置だそうですぞね。九州工業大学、西田治男教授の特許技術との事でしたが、普通は100度の水蒸気を更に熱することにより、何と500度もの高温の蒸気にして処理できる装置らしいがです。


高温処理できる事により特定のヘミセルロースを分解して、強度のあるセルロースを取り出すことができると言います。竹をそのままの状態に粉状にしますと、水分や有機物が多いため発酵してしまいますが、竹をこの処理装置にかけて粉体化する事により、非常に安定した竹繊維であり、強度的にも優れ、また帯電防止性などのある特性も確認されちゅうとの事です。


窯を加圧しなくても良い事も利点として上げられちょりました。装置の安全性がより確保しやすいので、今後生産を広げていけるようになった場合には、色々な場所への装置の設置がしやすいとの事やったです。


竹繊維樹脂


実は前々から樹脂に竹微粉末を混ぜこんだコップやお皿など食器類を目にする機会があったがです。確か小学校の給食にもエコ食器として導入された例があったよう思います。けんど、見た目にあまり変わりのないものを拝見しちょりましたので、竹の混入率はそんなに高いものではないと勝手に思いよりました。ところが50%もの混入を目指して研究されちょって、すでに成果を上げている事には、まっこと驚きましたぜよ。


始めて拝見させて頂いたのは側溝の蓋に使われちゅうと言う試作品。ポリプロピレンとポリエチレン樹脂に、何とこちらにも50%使用という事やったです。まさに竹繊維樹脂という新素材の誕生ですちや。半分の量を竹でまかなうとしたならば、かなり大量な竹材が必要とされるのではないですろうか?もしかしたら新素材用に竹が伐採されていく日が来るかも知れませんにゃあ。


竹微粉末


200マイクロメーターの微粉末にして使われる竹。これからの農業用コンテナなど色々と応用の範囲が広がっていき、その半分の量が竹繊維で使われるという事になってきたら、竹の活用も随分と進むがではないですろうか?伝統の竹は素晴らしいがですが、このような新しい時代へ向かいゆう竹の新素材活用には、また違うワクワク感を感じて楽しくなってきますぞね。


炭化竹新利用の研究 その1

八女バンブーバレー実証研究センター


たまたま訪問させて頂く事になった竹の研究機関があるがです。九州工業大学と協力して竹の実用化を目指されている、八女バンブーバレー実証研究センターさんぜよ。


敷地内には沢山の孟宗竹が運び込まれちょりました。昨今、あまり利用価値が無くなったものの、その生命力の強さから杉や桧など他の森林地帯や、そして近くの耕作地までも浸食していく、あまり有り難くない植物のように言われている孟宗竹(もうそうだけ)。日本にある竹の中では最大級の品種であり、普通、皆様が竹と呼ばれる物は孟宗竹である事が多いと思うがです。


けんど、まず皆様に一度知っていただきたいのは、そもそも孟宗竹が日本に渡ったきたのは諸説ありますが、300年足らず前の事ですぞね!そうながです、つまり外来種ながぜよ!まず、ここで皆様ビックリされませんろうか?と言いますのも、これだけ日本の山深い里山に行っても、何処に行ってもある竹が日本に元々あった真竹のような在来種ではなく、実は海外から、遙々運ばれて来られた品種なのです。そんな竹が、先ほど竹と言うたら孟宗竹である事が多いとお話したように、今や全国各地どこの里山にも生えている、一番目に触れる機会の多い竹となっていると言う事ですぞね。


今年のはじめに山形にお伺いした事がありますが、庄内では素晴らしい孟宗の竹林が広がり産地となっちょります。もともとは温かい地方の竹が北の寒い地方にも移植されちゅうがです。「モウソウ」と言えば竹の事を指すほど食文化にも浸透しちょります。遠く中国から渡ってきた孟宗竹が、まず食料として大きな筍が採れる事、そして太く長い竹稈が建材として、竹細工として使われる、植林などせずとも毎年どんどん新しい命を生み出す孟宗竹には、感謝しても感謝しきれない存在だったはずながです。日本人にどれだけ愛され必要とされ、ずっと役に立ち続けてきた事か、それが山形は庄内の竹林に入るだけで分かるがですぞね。


そんな生活の中に欠かせなかったはずの竹が今、安価な筍の輸入や日本の生活様式の変化などで使われる事なく放置竹林などと、ちっくと不名誉な呼ばれ方をして、神秘的なほどの成長パワーが今度は反対に仇となり、まるで竹が悪いかのような印象を持たれる事もあるようですが。それは大きな、大きな間違いながですぜよ。


だから孟宗竹を、これからの時代に有効活用していく事は、竹業界の方のみならず多くの方が考えちゅう事ですろう。いろいろな試行錯誤があり、解決の難しい問題も多々あって、まだまだ決め手のない竹の有効利用ですけんど、このような若い専門の研究員の方が頑張りゆうのを拝見させて頂くと、自分も負けられんと勇気をもらうがですぞね。


ステファン(Stefan Diez)さんの竹

竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)、Stefan Diez、Wataru Kumano、大谷宗平


今年は韓国、台湾、ニューヨークと海外に行かせて頂く機会があり、それぞれの国での竹に携わる皆様にお会いさせてもらい、まっこと感動、また感動の連続やったがです。竹でアジアは繋がっちゅうと改めて思いましたけんど、この竹文化を、どうやって展開していくのか、世界の中の日本の竹の素晴らしさや美しさを沢山の方に知って頂ける時代になってきたのだと、竹は、ますます面白くなってくると楽しみに思うちょります。


竹虎、Stefan Diez、Wataru Kumano、大谷宗平


たまたま海外を訪問する機会がありましたけんど、反対に海外から虎竹の里にお越しになられる方も多かった一年やったです。そんな中はじめてドイツのデザイナーの方とのコラボがありましたぞね。デザイナーのステファンさんは2回に渡って来日され、竹虎の工場で職人と共にあれこれ竹と格闘していただきました。


竹と言う素材を知らない方の作る竹、短い時間で製作できる事は限られちょります。今回は来年2月にストックホルムで開催される展示会までに、形を仕上げるという時間制限もありましたぜよ。会社に負荷がかかる事を承知でやらせてもろうたのは、「よそ者、若者、ばか者」の発想ぞね。


竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)、Stefan Diez、Wataru Kumano


一流のデザイナーの方に、こんな言う方は、こじゃんと失礼ですけんど、地域興しであるとか、昔からの慣習があって、なかなか変化がなかったり、風通しの悪い組織を変えていくには、このような考え方は多いに役立つろうと思います。竹の世界も長い伝統と歴史があって、何につけても今までの事を考えながら、過去の実績ありきの思考やき新しい動きが出来にくいがです。技術や竹の特性など知らない方の方が、自由に竹と向き合い面白い作品が出来上がると思いよりますし、作品もさることながら、竹との関わり合い自体、日本の竹職人とは全く違うちょって楽しい機会を頂いたがです。


竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)、ステファンStefan Diez、Wataru Kumano、大谷宗平


さて、仕事納めも終わり静かな竹虎には、今は試行錯誤された残骸のような竹が残るだけとなっちょります。静かな工場での一時は自分の大好きな時間でもあるがです。祖父もこうやって薄暗い工場をゆっくりと歩きよりました。


竹が話しかけてくる、人が聞いたら笑うかも知れんにゃあ。けんど、面白い。来年の向けて自分達はもう走りだしちょりますぞね。


干し野菜のススメ

干し野菜


有り難い事に小さい頃から野菜や果物も、竹職人さんや、農家の方から頂く事が多かったがです。内職さんの所に材料の竹を届けにいくたびに家のすぐ横の畑から、新鮮な採り立てを持たせてくれよりました。自家製のお茶やトコロテンまで頂戴する事もありましたので、高知県は、やはり海も山も自然に恵まれた素晴らしい土地柄でもあるがです。


そうやって頂戴してきた野菜を鍋料理などに使いますが、沢山あって使い切れずに残ってしまった物を、母が有効に活用していたのが干し野菜やったがです。けんど、それは我が家だけの事ではなく、虎竹の里はじめ高知県などでは天気の良い日にはアチラコチラの庭先で、竹ざるに大根やニンジン、椎茸など季節の野菜を干している光景は珍しくも何ともなく、ごく当たり前の事であり、干し野菜用としても竹ざるや竹籠などを普通にお求めいただいてきました。


干し野菜かご


ところが先日、たまたま入った本屋さんで干し野菜の雑誌が目につきました。それは入門書的なものであり作り方はもちろんですけんど、その美味しさや栄養価の事まで書かれちょって、ちっくと驚きましたぞね。昔からの経験として干し大根の美味しさや、野菜が長持ちするので保存に便利だろうという漠然としか知らなかった。干し野菜についての認識を新にするキッカケとなったがです。


乾燥野菜


竹虎には昔から広く使われきたエビラ籠を今でも製造しよります。主に土用干しの梅干し用としてご愛用いただく事が多く、近年では都会のベランダ用として通常の3分の2のサイズにして、小ぶりな使い勝手の良い物が人気となっちょりますが、この竹編みの平かごを使って干し野菜を作られる方も増えちょります。


干し野菜の煮物


干し野菜は陽当たりが良く乾燥しちゅう今時なら誰でも簡単に作る事ができるかと思います。野菜の水気がきれて野菜本来の味がギュと凝縮されますきに、もともと野菜好きな自分などには堪えられん美味さ。定番の煮物なども歯ごたえが良くなる上に、なんと栄養価があがり、食物繊維も十数倍になったりすると言われます。これは、まっこと少しの手間で食卓が変わりますぞね!


干し野菜オムレツ


オムレツに入れても野菜の存在感がしっかりあり、まっこと美味しいが違う!こんな卵料理で朝のスタートを切れるなら、こじゃんと充実した一日になる事は間違いなしやにゃあ。


昔から言われてきた暮らしの知恵には先人の思いが、いっぱい入っちょりますが、健康に直結して一番大事とも言える食文化ですので、自分達は安心して干す事のできる国産の竹ざるや竹籠を通して、後世に伝えるお手伝いをせんとイカンと思うちょります。


竹かご青春時代

青竹編み


ちょうど今頃は竹の伐採時期ですので新竹が豊富ながです。青物細工と呼ばれる真竹を使うた竹編みも、伐りたちで山から出したきたばかりのような竹を使うた商品は、青々としてこじゃんと気持ちがエイ。香り立つような竹と言うても大袈裟ではないがです。


そんな瑞々しい竹で編み上がってすぐの籠は持った感じも、水分が多いのか手に少しズシリと伝わる事があるくらい、生まれたばかりの若々しさや新鮮さも感じる、もしかしたら竹籠の青春時代かも知れませんちや。初めてご覧になられる方でもハッと目がとまるような輝きは、今だけしかないから余計に眩しゅうに映りゆうのかも知れません。


この素晴らしい時は永遠に続いたらエイですけんど、人の場合と同じようにそう長くは続かないがです。時間の経過と共に、いつの間にか青々とした色合いは乾いていき、白っぽく落ち着いた感じにと変わっていきますぞね。実は、この青竹の色合いをそのままの色に定着させる試みは、今まで色々な方が挑戦されたりもして来たようですが、自然のそのままの色合いを残すのは難しいようですぞね。青竹色の塗装をかける竹製品もあるのですが、これは人に例えたら厚化粧と同じですろうか。時と場合により必要な事もあるかも知れんけんど、あまり好みではないがです。


けんど、その若竹本来の青々とした色合いが無くなり、落ち着いて地味な色合いになる事は悪い事でも無いですぜよ。それからがお使い頂く方次第ともなって、竹肌に艶が出て飴色に変色したり、深みのある風合いになってくる、人が成長して人格を高めていくように、年齢と共に魅力がでるように、竹も時間の経過により進化していくがです。


そこで、時間と同じように必要なものは「愛情」。ずっと昔の魚籠や竹籠や竹ざるが渋い光沢を放ちながら今あるがは、この二つが上手い具合に揃うちょった賜やと思うちょります。


虎竹林のメガネ物語

日本唯一の虎竹林


あれは2日前のお昼前の事やったがです。いつものように山出しされる予定になっちゅう日本唯一の虎竹の竹林に続く細い山道を登って行きよりました。山の職人さんが伐採をする竹林は、もう少し上がった所ですけんど、ふと、横の竹林を見ると陽の光が差し込み、自分に何やら話しかけてくるような気がするがです。


「こりゃあ、こりゃあ四代目、ちっくとココでいざって(座って)いきや」


こんな声が聞こえる時には間違いなくエイ事の前兆ぜよ。喜んでイソイソと竹林に入って行ったら、ああ...やっぱりちや、優しく包み込むような陽射し、おまけに素晴らしく心地のよい風までも吹いてきて、ついつい竹林の奧へ奧へと足を踏み込んで行ったがです。


思わず我を忘れるような心地になることは、虎竹の里では、そんなに珍しい事ではないがぜよ。けんど、ハッと我に返った時に気付いたがです。


「しもうたっ!頭に付けちょったメガネが無いっ!」


差し込む陽射しが眩しいやら、陽の光が綺麗やらで、上を見たり、下を見たりしよりましたので、つい頭に引っ掛けちょったメガネを落としたのでした。大好きな眼鏡店で買うた一番のお気に入りなので焦ります。


「ありゃあ、何処やったろうか?」


無くしたと覚しき辺りを探してみます。最初はすぐに見つかると思いよりましたぜよ。そりゃあ何と言うても下草も綺麗に刈っちゅう虎竹林、見通しが、こじゃんとエイですきに普通の山とはワケが違います。


ところが...。


あちこち探し回りますけんど全く見つからんがです。一度下の道まで下りて行ってスペアのメガネも持ってきて、よくよく見て回りますがメガネの「メ」の字も無いぜよ。必死に探して、疲れ果てて腕時計を見ると午後2時半。


「たまるか、2時間も探しよったか...」


下草の手入れをした竹林ではメガネなど、すぐに見つかるものとばっかり思いよりましたが、意外に大苦戦、今日はタイムリミットとなりましたので、明日、再度捜索活動を続ける事にして、後ろ髪(坊主頭で毛は無いですが)を引かれる思いで帰社したがです。


竹林にクマデ


今日は、昨日の捜索をした所から再度挑戦ぜよ。2つの目よりも、6つの目と言うことで3人体制で徹底的に探すがです。さすがに、今日は自信がありましたぜよ。前日から打ち合わせもし、軍手にクマデと装備も完璧!こうやって竹の葉まで、ほじくりながらやき、絶対に見つかるハズやと思いながら探して行くけんど、やっぱり今日も、なかなか見つける事はできんかったがです。頭の中で、井上陽水の「夢の中へ」が鳴りはじめましたぞね。


「探しモノは何ですか?見つけにくいモノですか?」


けんど、その時やったがです。そんな唄をかき消すかのように山道の上から聞こえてくるのは、山出しの機械の音、ガタガタガタ......。


山出し機械


虎竹の里では現在、竹の伐採シーズン真っ盛り。竹虎の2トントラックの入って来られる大きな山道までは、山出し専用の機械を使うて少しづつ運び出してくるがですぞね。急勾配で、しかも曲がりくねった細い山道に、伐ったばかりの重たく長い虎竹を満載に積み込んでいますので、なかなか、ずるうない(楽ではない)山仕事ながです。


虎竹の里、竹虎四代目


「一体何をしゆうがぞね?」


「実は、メガネを落としてしもうて...」


こうやって話しをしよりましたら、実は落とし物は山の職人さんも、たまにする事があるそうながぜよ。そこで詳しく聞いてみたら自分の最初の対応がまずかったようですちや。見通しのエイ竹林でも、竹葉が一面に落ちちょります。その竹葉を昨日は慌てて、たつくった(混ぜまわした)ので、余計に見つけにくくなったと言う事でした。


なんとメガネの何倍もありそうな大きな鋸でさえ、竹葉を混ぜてしまうと、その中に紛れて無くしてしまう事があるそうちや。これは、自分の初動捜索のミスかっ!?


竹林ではクマデを使った捜索がまだまだ続きよります。ちっくと諦めの気持ちがよぎりだしました。一番のお気に入りで出番も多いメガネやったにゃあ。無くなったとしたら、もう一度全く同じメガネを買いたいくらいぜよ。


けんど、ずっと気持ちの中にあったのは、この紛失が虎竹の林であったことながです。この山で起こる事には、今まで必ず意味がありました。今回も絶対にそうぜよ大切にしていて、ずっと一緒にあったものが、突然ここで姿を消すという事は何かあるはず。メガネを無くしてから何度も何度も思いよった事を考えながら、用事を済ませに一度下道まで下っていったがです。


竹林から見つかった愛用メガネ


下には虎竹を山道から出してきて積み込む土場があるがです。そこで他の職人さんがいましたので少し立ち話しをしよりましたら、あれっ!?どうした事やろうか?メガネ捜索隊の2人が笑みを浮かべながら山道を下りて来るのが見えましたぞね。


「ありゃあ?もしかしたら見つかったが!?」


一時は諦めかけて、しかし、諦めるにも諦めきれずにおりましたので、声が思わず上ずりましたちや。けんど、やっぱり思うた通りやったがです。嬉しい予感の通りメガネは見つかったのでした。それも、まっこと呆気ないほど簡単に見つかったそうながです。


山の職人


見つけてくれたのは、山の上にもう一人おった職人さん、たまたま通りがかって一緒に探してくれたそうぞね。けんど、探すも何も、竹林に入るなり、


「あった、あった...」


と見つけてくれたそうながです。自分達があれほど探して見つからないものをどうして、これほど簡単に見つけてしまうのか?何とも不思議に思うて聞いてみると、


「山に、こんなモノがあったらワシらあにゃあ、すっと分かる」


大いなる自然に囲まれた山は自分の庭、そのような場所に、たとえメガネのような小さなものと言えども、異質なものがあれば簡単に分かるのだと、当たり前のようにサラリと言うてくれるがです。


さすがぜよ...!


今日は、まっこと山の職人さんの力に圧倒されましたぜよ。自分が前日から探し回り、更に今日は助っ人までお願いして探しても全然見つけられずにいたメガネを、こんなに、あっさりと見つけられるのは、やはり長年の山仕事の賜と言えますろう。


愛用のメガネは一晩、虎竹の里の山で過ごして帰ってきました。日本唯一の竹が自分に教えてくれたのは、山の職人芸と、この継承の大切さ。自分にしか出来ない事に全てをかける決意は何ちゃあ変わらんけんど、こうやって大きな課題を聞かせてくれたがぜよ。まっこと、本当の山の恵みというのは、こういう事かも知れんませんにゃあ。



笑顔が笑顔を呼ぶ

MTV撮影隊


今年も残すところ、あと1週間程度になりましたぞね。まっこと1年と言うたち早いものやと皆様も同じように思いよりますろう。この年の瀬にあたって別に何ちゃあ心残りもありませんけんど、ひとつだけ気にかかっちゅう事かあるがです。実はそれが、MTV(Music Television)ミュージックテレビジョンぜよ。


先月に18年ぶりにニューヨークに行ったお話はブログでもFB(フェイスブック)でもさせて頂きましたけんど、その時のお話で、あれは11月9日の事やったがです。前に来た事のある思い出の場所、ワシントンスクエア公園を歩きよった時、MTVの撮影隊に声をかけて頂いたがですぞね。


「ヘイ、そこのアナタMTVの撮影に協力してくれませんか?(たぶん)」


英語がさっぱりなので、おそらくこんな風に言うたと思います。そしてカメラに向こうて笑って欲しいと言うがです。まあ、笑うくらいなら出来るにゃあと思うて普通に笑いますと、


「OK!すばらしいですね、そしたら今度は少し抑え気味の笑顔で」


抑え気味の笑顔とは、どんな笑顔やろうか?ちっくと困惑しましたけんど、まあ、ディレクターらしき方の合図でクスッと抑えたであろう笑いをします。


「OK!ナイスです、もう少し抑えた笑顔で」


もっと抑えるのか?結構難しいがやにゃあ。これ以上笑わないのなら笑顔にはならんぜよ。そう思いながらやっていると、


「OK!大丈夫です、そしたら今度は大きく笑いましょうか?」


日本人の表情は分かりづらいと聞いた事がありますが、あまり笑うなと言われたら、そりゃあ笑顔ではないですろう。けんど、少し抑え気味すぎたがやろうかと思い、元気を出して大きく笑うてみましたぞね。


「OK!いいね、そしたら、もっと笑顔で」


もっと笑顔か!?やっぱり足りないか?今日は天気もエイし、ここは知らん人ばっかりやし、そんな事を思いながら大きく笑います。


「OK!最高です、本当に助かります。もう一度だけ、もっと笑顔で」


もっと笑う?自分より周りが見て笑いゆうぜよ。けんど、乗りかけた船やきに、もっと笑うてみましたぜよ。


「OK!ワンダフル、そしたら最後に、もっと笑顔で」


正直何を言うているのか言葉は分かりませんけんど、その方や周りのスタッフの表情や身振り、手振りで、こじゃんと、やって欲しいというのが伝わってきます。そこで、こじゃんと、やりました。身振り、手振りも勝手につけましたぞね。


「OK!よかったです。そしたら、もっと笑顔で」


ええっ!?まだやるのか、もう限界ぜよ、これ以上笑う事はできないぜよ。頭が真っ白くなりそうな所で、


「OK!さすがジャパニーズ侍、ご協力感謝します(これは適当)」


まあ、そんな感じで撮影終わったがですが、せっかくニューヨークまで来て偶然にMTVに撮ってもらいましたので、どんな動画になるのか教えてもらいたいにゃあと思うて名刺を渡させて頂いたがです。何か分かりませんが動画が完成したら是非拝見したいですし、沢山の方を撮影されるだろうから写っていないかも知れませんけんど、是非拝見できたらエイにゃあと思うちゅうがです。


撮影隊の方からは連絡がないですけんど、今までなら絶対に繋がらない人同士やったとしても、FBなどの出現で、その気になったら可能性はゼロでは無くなっちょります。それだけでも、まっこと凄い時代になったものですにゃあ。


けんど、笑顔ばかり撮影しよりました。この時の撮影隊の皆さんの笑顔が清々しく、気持ちが、こじゃんと(とても)良かったがですちや。笑顔が笑顔を呼ぶのは万国共通ながですろう。


価値あり、シンプルな美しさ

足付き台所籠


「青物」と言われる竹細工は、安価な海外からの製品が輸入されるようになったり、プラスチック製品などの普及がすすむと共に、急速に国産のものが作られなくなってきた竹の一つながです。


日本では竹が生活の隅々にまで浸透していて、あらゆる場面に竹がありました。それだけに、この青物細工のように実用的な竹編みは、大量に生産される産地としては、ちもろんあったものの、農家の方が自分で作られよった竹細工なども含めると、それこそ全国各地で何処ででも見る事のできた竹製品と言うてもエイがです。


菊底編み


それぞれの土地で、身近にあった竹を使うて作る生活の道具。竹の表皮を薄く剥いで編まれた竹籠は素朴で温もりがあり大好きな竹。竹表皮を剥ぐ事を「磨き」などと呼びますが、長い長い日本人の暮らし中で本当に磨かれて来たものは、間違いなく、この竹籠達自身ですろう。少しでも効率よく材料と時間を使い、丈夫で耐久性のあるものを作ろうと使い続けられた歴史の中で自然とよりよい竹編みとなり、これ以上足す事も、引く事もないような、伝統の籠としてシンプルな美しさを極めちゅうがです。


古い農家さんの納屋などで見かける事のある竹籠は、使い込まれて赤褐色のような色合いになっちょります。仕事で日焼けした肌のように、たのもしくもあり、深く刻まれた職人さんの手のシワのように尊くもあるがです。


磨きの竹籠


足付き台所籠としてご紹介させて頂く竹籠も、昔から良くご覧になられる菊の花のような形に見える菊底編みの、ごくごく普通の竹籠であり、何ら珍しいものではないかと思われるかと思います。運良く見かける事があったとしても、そのまま通り過ぎてしまう方が多いかも知れませんぞね。


けんど、竹ヒゴの取り方、編み方全てにおいて丁寧な仕事に徹したモノ作りの空洞化がどんどん進んできた日本では、もうこんな竹籠には、この先お目に掛かる事は少ないろう。もしかしたら寂しいけれど最後になるかも知れない、そう思わせるような本当に価値のある竹でもあるがです。


竹皮編みの小箱?

竹皮編み


竹は素晴らしい素材と言うことは、いつもお話させてもらう通りぜよ。竹の稈、根、枝、葉すべてが人の暮らしに活用されてきたがです。「衣・食・住」で笑顔を作り続けてきた理由には、身近にあって加工しやすい、竹の百変化と思えるくらいに色々な姿を変え、形を変えていく竹には人の生き方まで教えてくれゆう、そんな思いさえするほどながです。


けんど、まだある大きな理由のひとつが驚異的な成長力ですぞね。植林などという苗木を植える手間もいらず、地下茎を使い毎年生えてきて見る見る大きくなって葉を茂らせる、竹ならではのパワーには正直、毎年のように驚きをもって見守りよりますぜよ。おっと、そして忘れてはいけないものが出て来ましたぜよ!先ほどの竹の稈、根、枝、葉など全てを使い切ると言いましたが、そうです、地下茎で増えていくのは筍ですぞね。


毎年美味しい筍を楽しみにされちゅう方も少なくないと思います。竹は成長した親竹だけでなくて、なんと子供の筍まで人を喜ばしてくれるがです。これだけでも万能選手の竹に拍手喝采の気持やけんど、実はこの筍の皮まで利用できるがですき驚く他はありませんろう。竹皮には天然の抗菌性、消臭性があります。水にも強く、耐久性があることから草履など履物に多用されちょり、竹虎の定番商品ともなっちゅう竹皮草履は素晴らしい履き心地で、一番のファンで良さを知っているのは、おそらく竹虎の社員自身ではないかと思いよります。


竹皮草履は細やかな職人技によって美しい逸品に生まれ変わるがですが、竹皮そのままでも昔からオニギリを包むのに使われてきました。近年は量販店に行っても販売されゆう竹皮は輸入のもが多いぞね。思うほど使い方も難しくなく、再利用して使う事もできますので、多少値段は高くなりますが国産の竹皮にも目を向けてもらいてたいにゃあ。そう思うて竹皮職人さんの事もウェブサイトで紹介しちょります。竹皮で包んだ弁当などバックから取り出したら、こじゃんと格好がエイと思うがです。日本の竹皮は、ほとんどが使われる事なく山で朽ちよりますので、こんなもったいない資源はないがですぜよ。


恐らく同じような気持ちがあるのだと思います。職人の作業場に行った時、傍らに竹皮編みの小箱が置かれちょりました。似たようなものが輸入でもあるようですが、人の顔で日本人とアメリカ人とが判別できるように、竹皮にも顔つきがあって分かるがです。職人さんが手編みされた竹皮小箱に手をやって持ち上げようとしました。


「ややっ......!?土台に固定されちゅうのかっ!?」


まっこと最初はビックリしましたぜよ。毎日竹皮草履を愛用しよりますので竹皮の軽やかさは熟知しちょります。だから、そんなつもりで軽く手をのせてみたのですが、全く動かなかったがです。驚いて深く持ち直して力を入れて持ってみたら、何とか上に持ち上がりましたぞね。小箱とばかり思っていた中身にギッシリだったのは何と鉛!細工用の重しとして、ちっくと凝ったものを作って、ご自分で愛用しよったがでした。


笑顔のこぼれる工房からは、竹にのせて笑顔が伝わっていくがですろう。


日本唯一の虎竹網代弁当箱

日本唯一の虎竹網代弁当箱


今までありそうで無かったのが日本唯一虎竹を網代編みした弁当箱ぜよ。網代(あじろ)編みというのは、弁当箱などには定番とも言える編み方のひとつですので、もしかしたら虎竹ではないにせよ、どこかで、ご覧になられた事のある方もおられるかと思うがです。実は普通の方が想像される以上に一本づつ丁寧に丁寧に竹ヒゴを作っていかねばならないのです。まっこと細かく、技術と時間が必要とされる工程で、お弁当箱の編み込み以上に手間もかかる大切な仕事ながです。


けんど、そんな職人の技を駆使して編み込むだけあって、胸を張るような出来映えですぞね。渋い風合いが、毎日のお弁当をグッと引き立ててくれそうながぜよ。これは、お昼のサイレン...おっと竹虎の工場みたいにサイレンは少ないろうか、チャイムとか何とか時報の音は何でもエイですけんど、とにかく、ランチタイムが待ち遠しくなる事は間違いないがです。


竹弁当ふろしき包み


竹弁当箱の持ち歩きには、あまり大きくない風呂敷が便利ですぞね。通気性があるのが竹弁当の利点のひとつでもあります。蓋の上でしっかりと結んだらマイ箸を差し込んで準備OKぜよ。なんか、こうやって見たらどうですろうか?こじゃんと(とても)男前に見えませんですろうか?格好がエイにゃあ、学校に行くにしても、会社にしても、なんか一本キリリッと気が引き締まる思いですちや。


虎竹弁当箱のランチタイム


さて、そしてお待ちかねのお昼ご飯。虎竹の弁当箱に、虎竹のマイ箸という何とも贅沢な取り合わせ。少し前は当たり前にご自宅で作りよりましたお弁当は、一時期あまり姿を拝見しなくなったかのように思われちょりましたが、なんと、近年のお弁当ブームとでも言いましょうか、女性の方だけではなくて、特に男性の一人暮らしの方でも、自分のお弁当を作る方も増えてきたと聞いちゅうがです。お弁当文化が見直されちょりますのは、まっこと嬉しい事ではありますし、これからの世の中には、ますます必要とされ定着してもらいたい食文化の一つぜよ。


さて、今日の正午もやってきました。数々のお弁当箱が日本国中で開けられると思うがですが、この日本唯一の虎竹網代弁当は自分だけやろうにゃあ(笑)。そんな密かな喜びを噛みしめながらいただく昼食時間です。


竹林浴日和、虎竹の里

虎竹の里へお客様


この日は、どういう訳か遠くからお越しのお客様が、何組かお越しいただくようになっちょりました。おりからの日本列島をおそう寒波で温かいと思われちょります高知県でも、山間部の方では雪がちらほらと降っている所もあるようでしたが、お陰様で虎竹の里は風もなく、明るい陽射しが竹の葉の間から差し込み、まっこと絶好の竹林浴日和の一日やったがです。


日本唯一の虎竹林


いつも思う事ながですが、まっこと竹林に来られると、何故か分かりませんが何とも心地がエイものです。そして、不思議と気持ちも安らぎ笑顔がこぼれますぞね。これは日本人と竹が古来ずっと長く深い付き合いがある証であり、脈々と続いてきた「衣・食・住」という生活の中で、役に立ち続けてきた事の一つの表れではないかと思うちゅうがです。


けんど、竹があまり成育しない国から来られちゅう海外の方でもやはり同じようですちや。小鳥の遊ぶ声だけが聞こえてくる静かな竹の中で、顔を輝かせて本当にイキイキとされちょって、ご案内させて頂く自分達も、まっこと嬉しゅうになってくるがぜよ。


山出し


ちょうど、この山から虎竹が伐採されて、山道を運ばれて麓の土場に竹が出始めるところでした。「白っぽい竹ですね?」そんな質問がありましたきにお教えさせていただきゆう所です。虎竹は淡竹(はちく)の仲間ですので、表面に粉をふくように白くなるのが特徴ながですが、その下を良く見ますと虎のような模様が隠されちょりますぞね。これを選別した後にガスバーナーの高温で油抜きしていきますと、美しい虎模様がクッキリと浮かび上がってくるがです。


油抜き加工された虎竹


お客様は変わって、お一人で虎竹の里までお越しになられた方にも、竹の虎模様が浮かび上がった所をご覧いただきよります。まだ伐採されて間のない新竹を加工しよりますので、他の種類の新竹と同じく青々とした部分があるのです。この色合いは少し経てば数段落ち着いて青さは無くなりますので、人間同様、若竹の青春時代と呼んでエイ季節も、アッと言う間に過ぎ去ってしまう物ながですぜよ。


虎竹の里


虎竹の里の山々を遠くからご覧いただきながら、この谷間にしか生育しない虎竹の事を説明させてもらうがですが、いつも皆様一様に驚かれるがです。あの頂上までは竹があるのですが山を越えると竹が無くなったり、竹の色付きが無くなるのは、どうしてなのか?いつも不思議に思われる事で、ご質問も頂くのですが、命名の父であられる世界的植物学者の牧野富太郎博士が、生前研究された高知県の土質調査では、この谷間だけ土質が違いますし、大学の研究機関の調べでは土中に特殊な細菌がいるようです。しかし、そけだけではなくて山の職人さんが言うように、潮風の具合や、霜、陽当たりなど複数の要因が重なって、この虎模様が生み出されるがですろう。


インターネットなどで虎竹の事をご存じいただく方が、少しではありますがおられるようになって、虎竹を知っていただく事だけを思い、取り組みつづけよります。自分達などは本当に感激するがですが、やはり、現場にお越しになられて始めて分かる事も多いようですぞね。思われるより小さな虎竹の里の、地域だけの特産の竹と言うことは、何度も何度も繰り返して、お話しをさせてもらいゆうつもりですが、ここで体感される事が、やっぱり一番かも知れんがです。


竹巻きの大きな柱

竹巻きの柱


韓国最大の竹の町、潭陽(damyang)にお伺いさせて頂いた時、ご案内頂いた近代的な建物の中に一際目を引く大きな柱があったがです。細く割った自然素材のヒゴで柱全体を上手く巻いて飾られています。遠目には籐だろうか?それとも木の皮か何だろうか?と思いながら近寄ってみたら、さすが竹やったのです。


柱の太さも、かなりの物ながですが、建物の天井自体の高さも結構あって、下から上まで竹編みされた柱は、まっこと立派ですし、竹編みがコンクリートと鉄とガラスだけ空間を温かく優しい室内に変えてくれちゅうと感心して拝見したのです。


建物と言えば思い出す事があるがですが、潭陽にあるビルの屋上には半円形の造形物があるのです。最初は気にしていなかったのですが遠目に見ると、建物全体が一つの手提げ籠のように思えるので聞いてみると、やはり、竹籠を意識した造形との事で驚いたがです。それほど竹に力を入れた、竹にこだわった町というのは、竹に携わる者のとしてウキウキしてきたがですちや。


竹ひご


竹ヒゴも長いものが必要かと思うのですが、一本一本竹表皮を薄く丁寧に磨いて仕上げており、面取りもしていて手で触れても、こじゃんと気持ちがエイのです。時間が経つにつれて色合いが深く艶も出てくるのではないかと思い、再度訪れる事があればと楽しみにしちょりました。


ところが先月の京都で開催されました全国竹の大会に、この細工をされた職人さんが遠く韓国から来られちょりました。京都は竹の本場でもあります、せっかくの良い機会ですので、色々と見て回られる勉強も兼ねてのご参加だったようですが、竹細工自体でも感じ入っていましたのに、ご本人にお会いさせて頂いて更に親近感を覚えますぞね。次に拝見する機会があれば又違う見え方がするろうか?そんな事を思い楽しみが一つ増えた気分ながです。


見慣れない竹刃物

竹刃物


日本は狭いと言うても南北にのびて四方を海に囲まれた海岸線の長さは、何とアラスカを除いたアメリカ大陸より長いと言われます。そんな海があり、富士山に代表されるような高い山々があり、美しい四季の巡る日本には、それぞれの地方で気候も多彩、人の暮らしや文化にも多様性があり、それだけでも豊かな国と言うても良いのではないですろうか?


竹にしても寒い地方に行くほどに真竹や孟宗竹のような竹は、だんだん少なくなり、自生していても温かい地方の竹より随分と小振りな大きさになっちょります。だから北の地方の竹細工は主に根曲竹やスズ竹、篠竹といった細い竹を使う細工が中心ですぞね。反対に温かい地方は太い真竹や孟宗竹が育ちやすく、それらの竹を活用した竹細工が西日本には多いがです。南方系の植物の竹は雨が多く温暖な気候の四国や九州が、成育には非常に適した土地であるのです。


竹の違いが竹細工の違いになりますけんど、先日は、こじゃんと変わった竹刃物を拝見させてもらいましたぜよ。鉄を叩きのばしただけのような無骨さ、持ち手には何も巻くこともなく、この辺りでは、こんな包丁で竹を割るがやろうか?持たせてもらうと、とても重くバランスを取るのも難しいように感じます。そうこうしている内に、この刃物を原型として、持ち手を木でしつらえたものがある事も知りましたぜよ。こちらは手にしてみると数段扱いやすく思いましたが、実は元になった刃物は中国の竹職人さんが使われていた物だそうです。大陸の方では、この一本で竹割からヒゴ取りまで器用に使いこなして何から何まで事足りちゅうがです。


そう聞いて思い出すのが中華料理の料理人の方が使う包丁ぜよ。確か、大きな中華包丁一本で大きな肉片もぶつ切りするし、細やかな飾り細工も器用にされていたように思うがです。もしかしたら、大は小を兼ねるという発想ですろうか?何でも大きな刃物で使いこなすのが中国の職人さんの流儀なのかもと想像するがです。


持ち手部分を改良した竹職人さんによれば、使いだすと手放せないくらい使い勝手が良いそうですぜよ。竹細工は、もともと大陸から日本に渡ってきてから、日本人の感性に合うように変化させてきた歴史がありますきに、このような刃物も自分たちの仕事に取り込み、使いやすいように変化させていくのは、ごく自然な事かも知れませんぞね。


海外向けビデオ撮影の一日

竹虎本社工場


あれは2009年の事でした、虎竹の里を撮影したいとの問い合わせに、「アマゾンです」と言われますので、あのインターネットのアマゾンさんか?とドキドキして話しを聞きよりましたら、同名ではありますものの全くの別会社様やったがです。あの時の事はハッキリ覚えちゅうのに早くも6年も経とうとしゆうがやにゃあ。今回、改めて動画を制作され直すのに当たり、再度アマゾンさんが来高されて撮影が始まったがですが、しみじみと時の流れの速さを感じてしまうがですぞね。


竹籠編み方


数年前に来られた時には虎竹林などを中心に撮って頂いちゅうがですが、今度は竹編みの種類なども紹介されたいとの事で、竹籠や竹ざるをいくつか竹職人さんに用意してもらっていました。竹編みの種類というのも、こじゃんと(とても)沢山あります。違いが分かりやすく、比較的目にすることの多い、網代(あじろ)編み、四ツ目編みを披露してもろうたがです。


竹細工は出来上った美しい籠やざるだけを見ていると、もしかしたら何か専用の機械でもあるのだろうか?と思われちゅう方もおられるようながです。けんど当然の事ながら手際よく編み上げる工程は全てが職人の手によるもの。こうやって撮影した動画を広くご覧いただく事によって、本当に少しでもエイので竹に対する理解が深まればと思うがです。


虎竹ピクニックバスケット


虎竹のピクニックバスケットは、編むというより組上げるという、そんな表現がピッタリくる竹細工ながです。ところが編むのではないから簡単かと言うと実はそうではなく、他の竹編みとは違うノウハウがあり決して楽ではない竹製品ぜよ。自分の小さい頃には何種類ものサイズがあって、竹虎の本店にも、まさに山積みのように置かれちょった竹細工であり、九州の地方では豆腐かごとも呼ばれよりましたが、要するに日常使いの竹として愛用され続けてきたものながです。そうそう、たまに骨董品の店先などで、深い飴色になった籠を見つける事がありますが、その姿を見るだけで、その家庭で重宝されてきた毎日を思うて、ちっくと(少し)嬉しくなったりもする竹籠でもあるがぞね。


日本唯一の竹林


せっかく虎竹の里にお越し頂いちょりますので、前に一度撮って頂いてはいるものの、日本唯一の虎竹はどうしても撮ってもらいたいですし、東京から、はじめて来れているスタッフさんにとりましては、貴重な体験になるかと思うて当然のように竹林にやってきましたぜよ。


ハーハー息をあげて登って来る急勾配の細い山道。はじめは桧などが見えちょりますが、少し上がると辺り一面が虎竹になる、その気持ちよさ、明るい陽射しが差し込む竹の間を吹き抜けていく風の清々しさ、やっぱり、ここに来て体感いただく事こそが、動画を製作されるにしても一番大事なことですろう。虎竹の里の山々に何本となく伸びている、このような何でもないように思える山道が、竹虎にとって命の道という事だけは知ってもらいたいがぜよ。


竹虎本店


実はカメラを向けられたインタビューは、こじゃんと苦手ながです。そもそもスポットライトを浴びる機会のない田舎者が、このように何人かの方に注目していただくだけで緊張してきますちや。少し頭の回る方やったら何か聞かれたとしても、スマートな返答ができるろうし、伝え方も上手ですろう。けんど、慣れない自分などは聞かれた事に真っ直ぐに正直に自分の本気の思いを話すことしかできないがです。


今回のインタビューでも何を話したかあまり覚えてはいないがですが、改めて自分は本当の事しか話せん男やにゃあと自分で思いましたぞね。言いすぎた事があるかも知れん、分かりにくい事があったかも知れん、けんど、自分には竹しかないし、話した事は全部自分が竹に思う本心しかないがです。


干支の竹未その2

干支ひつじ


いよいよ早いものですぞね。毎年同じ事を思うて、同じ事を言いゆう気がしますけんど、いよいよ2014年もあと半月余りになってしもうちゅうがぜよ。アレもしないと、コレもしないと...と結局できないまま一年が猛スピードで駆け抜けていったのは誰のせいでもなく、自分のせいであるがですが、そうそう、今年は「馬年」やったせいもあるかも知れんぜよ(笑)。


前にもいちど来年の干支に付いて書いた気がしますけんど、「羊」は穏やかで、のんびりした感じの動物の年なので、そんな一年になったらエイにゃあと思うたりしゆうがですが、竹細工で表現された羊は、なかなかの出来映えですぞね。丸竹を切っただたけで胴体部分が作られちょりますが、それぞれのバランスが絶妙なのだと思います。おっとりとした雰囲気が何となく伝わってくるがです。足は厚みのある竹の身部分を削り出して作られちょって、その短さから、細い丸竹の輪切りの角のあしらい、竹表皮を少しだけ剥いだだけですが、その顔の表情など、まっこと玄関飾りなどにしていたら、お年始のお客様にも思わず笑みがこぼれそうですぜよ。


竹の太さの違い、竹の厚みの違い、それぞれを組み合わせて、こんな竹人形を創作できるとは、竹職人の技と感性には、まっこと脱帽しますけんど、それを可能にする細い竹、太い竹、白い竹、厚みのある竹、見渡せば、どこの山々にも青々とした葉を茂らせ、当たり前のようにして日本人の近くにいつもある竹素材そのものにも感激するがです。


自分主義の最強真竹深ざる

最強真竹深ざる


いやいや、これは丈夫な竹深ざるが編み上がりましたぜよ。一目みて最強と思うた理由は、その縁巻き幅が何と2.5センチもあるがです。青々として清々しい竹ざるです、香りもエイですし、まず手で触れて持ってみたいと思うて立ち上がって持ってみるがです。両手にズシリと心地よい重みを感じるのは、新竹で編まれているという事それだけでは無いですろう。丁寧に面取りされた一本一本の竹ヒゴには厚みがあり、幅も広い、なるほど、これか...つい頷いてしまう納得の竹ざるです。


高知は鰹など海のものが有名で多いように思われちょりますが、その実、前々から園芸王国とも言われて来ちゅうがですぞね。県外から来られた方が口を揃えて野菜の色合いが濃いし、味もしっかり野菜の味がして美味しいと言うていただく土地柄ですぜよ。そこで農家さんでは野菜作りをされゆう方も多いのですが、そんな畑で働く皆様、言うなればアウトドアのプロの皆様に、実際に仕事で使われてアレコレと指摘を受けて改良に改良を続けていくうちに、もっと丈夫で堅牢な壊れにくい竹ざるを使い勝手の良い竹ざるをと追求して辿りついた形ながぞね。


そもそも初めから既成の竹籠作りとは一線を画されちょって、伝統の竹とは違う雰囲気で自分としては新鮮やったのは、誰か師匠についた事もなく、ずっと自己流を貫いてきたからやにゃあ。若い頃から手作りに慣れ親しんだ職人さんが、身近であるし周りに豊富にあって、材料集めに困らない竹を扱い、自分なりの竹籠を編まれるとは、まっこと素晴らしい事ですちや。


小さい頃には、こんな骨太で頼りがいのある竹ざるに、洗った食器類を入れるのも天こ盛り、収穫した野菜も天こ盛り、そして、両手とお腹でしっかり持ってから使いゆう大人がおったにゃあ。懐かしく思い出しながらきっと農家さんで評価されているように、他のお客様にも必ず気に入って頂き喜んでいただける一枚になると、ご紹介できる日を、こじゃんと(とても)楽しみにしゆうがです。


カズヨナカノ先生と行く日曜市

カズヨナカノ先生と行く日曜市


高知には300年以上の歴史を持つ街路市があるがです。街路市は全国各地に色々あるかと思いますけんど、野菜や果物はもちろんの事、海産物、刃物、植木など500店舗が軒を連ねる土佐の日曜市は恐らく規模的にも一番ではないかと思うがです。ズラリと並んだテントの下には開放的な高知らしい笑顔いっぱいの個性的なおじさんやおばさんが座っておられて、買い物のやり取り自体も、こじゃんと(とても)楽しめる市ながぜよ。


中野和代先生、近森さん、福永さん、竹虎四代目


今回、中野和代先生は高知が初めてとの事ですし、せっかくニューヨークからお越しいただいちょりますので、是非この日曜市をご覧いただきたくてお連れさせてもろうたがです。さすがに南国と言うても朝の街路市は少し肌寒く、中野先生もコートとニット帽子、手袋そしてサングラス、なんか明らかに地元の方とは雰囲気の違う出で立ちですが、雑多な市に妙にマッチされちゅうのが不思議ですぞね。


日曜市の「べく盃」


高知は野菜や果物が豊富で美味しい所ですきに、水晶文旦など今ならではの果物に目が行くがですが、目にとまった一軒が焼き物のお店でしたぞね。沢山の食器類に混ざって、べく盃と呼ばれる杯を販売されちょりました。この杯には穴が空いています、又すり鉢状になった形ですので、杯を空けない事には置く事ができない仕組みですぞね。つまり、ひとつの高知の酒文化を表した品物なのです。段々と人の気質も移ろいではおりますが元々の高知県民気質は、こんな小さな杯に宿っちゅうがですろう。


日曜市陶器店


しかし、ちっくと驚いたのが、売り子のおばさんが手にされちゅうのが何と英字新聞やったがです。おばさんが暇な時に読むのかと感心しよりましたら違うちょりました、包み紙に利用されゆうがです。新聞には事件や事故も掲載されちょります。英語やったら、そうそう読まれる方も少ないので使いゆう、そんな細やかな心配りもされちょって嬉しくなったがです。


実は竹虎でも荷物をお送りさせて頂く時の緩衝材には、地元の高知新聞をずっと使い続けちょります。これは地方の小さな情報が読めるとあって、なかなか好評ながですが、やはり同じような気持ちで新聞紙面を選んで使わせてもらいよります。


日曜市のトマト


後、足が止まりましたのは真っ赤なトマトの前やったです。中野先生も赤さが違うと言われよりましたが、自分も改めて見て、その赤さに見入りましたけんど、販売されゆう皆さんは、


「私らあはコレがトマトと思いゆうけんど...」


高知フルーツトマト


と、まったくの自然体ながです。ありゃあ、これは何処かで聞いたような台詞やにゃあ?実は自分や虎竹の里の生まれ育った子供達が大きくなって言う言葉そのものでしたぜよ。


「虎模様のあるのが竹と思いよったけんど...」


考えたら虎竹もトマトや他の野菜、果物などと同じ自然の恵みですぜよ。高知ならではの気候や風土が美味しい野菜を作るように、虎竹も高知ならではの大自然の中で育まれた大切な宝ですろう。朝の日曜市を中野先生と歩くと見えて来る景色が違う事に気づくがです。


中野和代先生と虎竹の里

中野和代先生と虎竹


30年近くに渡ってニューヨークでバックデザイナーとしてご活躍されよります、中野和代先生が虎竹の里にお越し頂いたがです。年に数回、日本に帰って来られる機会を使うてのご来高ですけんど、先月にニューヨークで初めてお会いさせてもろうて、こんなに早く虎竹をご覧いただけるようになるとは考えちょりませんでした。まっこと、田舎者の自分などとは違うて、トップランナーの方の行動力を垣間見る思いながでぞね。


お洒落なハイヒールは歩きやすいとの事でしたが、虎竹の林に向かう山道は細く、こじゃんと急勾配なので、女性用にと用意してある長靴に履き替えて竹林まで登って頂きます。単身海外に行かれて流行の激しいファッションの世界で成功されちゅう方です。お仕事は自分などが想像できないような厳しいものがあったろうと思うがですが、中野先生の竹に対する眼差しは、まっこと優しく穏やかですぞね。


虎竹選別


ちょうど虎竹の伐採の最中でもあります。細い山道から運び出された虎竹は一ヶ所に集められて積み上げられ、今度はトラック一台分づつ広い土場に運び込まれます。この日も山出しされた竹を土場で選別されよりましたぜよ。虎竹の里で伐り出される竹は、もちろん全てが虎竹ではありますが、全部が全部に色付きがあるという事ではないがです。そもそも虎竹の虎模様がどうして出来るかは今だ解明されちょりません。命名の父、世界的植物学者の牧野富太郎博士の調べられた高知県の土質地図では、この里の谷間だけ色が違うちょりますので、土質の違いがあるのは間違いないかと思うちゅうがです。


また、京都大学からは2回ほど虎竹の調査にも来られちょりました。この時には土中にいる特殊な細菌の作用ではないかとの事でした。けんど山の職人さんは土佐湾からの潮風や霜が降りないと色が来ないと言うて寒さが大事などと、実は色々な事が言われちゅうがです。恐らくは、そんな様々作用が複雑にからみあい、この土地特有の天然の意匠は生まれるがではないかと思うちょります。


竹虎本社ナカノカズヨ先生


そんな虎竹を色付き別、また太さ別に一本づつ選り分けて、色付きの良い美しい虎竹だけを製品にしていくがですぞね。竹虎では祖父の代からずっと製造し続けてきた袖垣をご覧いただきました。何と言う事のない竹製品に見えますけんど、孟宗竹の芯を細く割った虎竹で巻いて仕上げていく伝統の技法が活かされちょります。そして、それぞれ細かく分業化されています。孟宗竹を伐る方、虎竹を細く割る方、ヒシギを打つ方、黒穂やカズラを集める方、沢山の方々の力が集まって、ようやく一つの虎竹袖垣が完成するがぜよ。


竹虎本店、ナカノカズヨ先生、平岡宝石さん


中野先生に「竹虎四代目君」と一緒に写真をお願いしましたぞね。竹虎四代目の顔が3つも並んで、ちっくと気持ち悪いろうか?なに?3つ...確か一つは顔抜きのはず、そう思うて良く見たら、以前中野先生のご講演を聴かれた事のある、平岡宝石さんが来られて顔を出しちょりましたぜよ。はるばると高知県須崎市にまで来ていただいた中野和代先生を大歓迎する満面の笑みは素晴らしいがです。


お片付けの味方登場

虎竹二段フリーボックス


遂にやって来ました、お部屋のお片付けの味方ながです。スッキリとして物の少ないリビングなどには憧れますけんど、それは、それ、実際に生活しよりましたら雑誌やテレビを拝見したり、またまたモデルルームみたいに生活感の無い空間には当たり前ですけんど、なかなか出来ないものながです。


けんど、そんなご自宅を少しでも整理整頓させて綺麗なお部屋で過ごされたいと言う方のために、虎竹フリーボックスが新登場しましたぞね。けんど、そうです、その通りです。フリーボックス自体は虎竹を染めた小判型のものや、丸型など3種類ほどが前からラインナップとしてあるがです。ところが今回のそれは大きな特徴があって、それが二段式なのです。


片付け用竹籠


冬は竹の伐採シーズンでもあり寒風の吹く中で、竹を肩に担いであっちに、こっちに運んだり、選別したり、切断したりの加工作業というのは大変です。ところが、さすがに南国土佐ですろうか?室内はと言えば、朝はあれだけ寒かったのに、太陽が昇って輝きだしたら、窓から差し込む陽射しに思わず窓を開けたくなるくらいの温かさ、まっこと有り難いことながですけんど、そうなると、ついつい休日などであればテレビを見ながらウトウトとうたた寝してしまう事もあるのです。


そこで、自宅のリビングにはブランケットがいつも常駐しちょりますが、この虎竹二段フリーボックスの下籠は結構な容量があって、薄手の毛布なら十分に収納できてしまうがですちや。


整理かご


そして、浅く作られた内籠には新聞や雑誌を入れるのも良し、最近はどこのご家庭でも複数個あるのでないかと思われるリモコン類やスマートフォン、メガネなどの定位置にしておくのも良いですろう。大きなものから小さなものまで、竹のある暮らしでスキッとしてもらいたいと思うちゅうがです。


清々しい竹アイスペール

竹アイスペール


年末年始にも出番が多くなりそうな竹のアイスペールがあるがです。孟宗竹の本体に、真竹を加工した持ち手付き、竹の清々しさそのままにお使いいただけて宴席を盛り上げてくれそうな一品。竹と言うたら丸いものばっかりと思われちゅう方もおられますけんど、実は楕円形やったり何だりしていますので、太く形のよい孟宗竹を選んで加工されちょります。


竹節


丸竹そのまま加工して使う竹製品には竹節が付く事が多いですが、天然の竹節をそのまま活かした製品というのは、ひとつ、ひとつ違いがあり、味がありまっことエイものですぞね。本来は身の厚い竹を出来るだけ均一になるように薄く削られているので丸竹に多い割れ防止にもなるがぞね。正確に丸い形のものを同じ厚みに削るのなら簡単ですけんど、自然の竹はそれぞれ形も硬さも異なっちゅうので、何の気なしに見ている竹アイスペールですが、実は竹職人の高度な技が隠されている竹のひとつながぜよ。


鬼おろしでキャロットケーキ

鬼おろし


竹の鬼おろしは寒い季節の鍋料理などにも、こじゃんと活躍する竹製品の中でもスター選手のような存在ですぞね。一般的には大根おろしに使うて鍋の薬味などが、まず思い浮かびますけんど、鍋そのものに大根おろしを入れる、みぞれ鍋なども美味しいがですぞね。そうそう、みぞれ鍋と言うたら雪見鍋とも呼ぶと教えてもらいましたちや。そう聞いて改めて鍋を思うたら、まっこと雪見ぜよ、雪見ぜよ!


さて、けんど今回は大根以外の食材にも使うてみたいと言う事で、リンゴ、玉ネギ、ニンジンの3種類用意したがですぞね。まずリンゴですが、皆様は西城秀樹という歌手をご存じですろう?そして、ハウスバーモンドカレーのCMを知っちょりますろうか?自分と同じ世代の方なら「リンゴとハチミツ、トロ~リ溶けてる」というCMソングは頭から離れないかと思いますぜよ。と言う事で、リンゴはカレーに使うというのが第一の使い方ながです。その他にもジャムやヨーグルトに入れたりすれば、美味しさもアップするし食物繊維や栄養バランスも整い健康にも良いがです。


玉ネギは摺り下ろしたら何に使えるろうか?ちっくとイメージ沸きませんでしたけんど、いつものドレッシングにプラスするだけで食感も楽しめて、味わい深いオニオンドレッシングになるがですぞね。そう言うたら、どこかのレストランでマヨネーズに玉ネギを合わせたものを食させてもらった事がありましたにゃあ。玉ネギは他の食材と合わせやすい万能選手かも知れませんぞね。


キャロットケーキ


最後にニンジンですが、これは摺り下ろしてケーキに入れてみる事にしましたぜよ。何ちゃあ凝ったものではなくても、水に溶くだけで結構美味しいケーキの素などが沢山あります。そこに鬼おろしで摺ったニンジンを入れるだけで、なんと、キャロットケーキぜよ。いきなりパティシエ(菓子製造人)になった気分ながです。


蒸篭(せいろ)


寒くなってきたら街角で湯気を上げる蒸篭料理についつい引き寄せられる方も多いかと思いますが、このキャロットケーキも焼き上げるのでは無くて、蒸篭で蒸し上げることにしたがですぞね。


お湯がグツグツ言うて蒸篭から美味しそうな湯気が立ちのぼります。やっぱり湯気はエイですにゃあ。炊きたてのご飯や、お味噌汁を連想するきかにゃあ。心が安まるような気持ちのよい時間を過ごした後、竹編みの蓋を開けたら、この通り、フカフカのホワホワの、こじゃんと美味しそうなキャロットケーキぜよ。


虎竹風合いそのまま

展開竹


自然の虎竹をそのまま花入れにした風貌が目にとまりますぜよ。竹を半割にして途中を折り畳んだかのような形、「展開竹」とも呼ばれる技法で作られた花器ながです。丸竹のまま使うたら割れる事の多い虎竹も、こうやって一度割ったものを使うという事であれば、竹そのままの風合いを残しながらも、ずっと愛用できる耐久性を持つのです。


同じような形の花入れは白竹では、まれに見る事がありますぞね。もっと大きな竹を使われちゅう事がほとんどで作品にした場合の横幅が広くなるがです。けんど虎竹で拝見する事は、今まで一度もありませんでしたちや。近年、虎竹は直径の太い竹が少なくなっていますので、作品自体も小振りにはなりますが真竹に比べて扱いづらい虎竹での製作には、少なからず苦労されちゅうのではないかと思うがです。


虎竹花入れ


そっと寝かしてみて横から眺めると鯨か何か生き物のようにも見えますにゃあ。竹を薄く削り節を合わせて折りたたむように曲げるのは、さぞ神経を使う細工やと思うがです。網代編みのような細かい編み目の竹細工より、このような一見すると竹そのままで簡単そうに見える技が、実は難易度が高かったりするがですぞね。


竹籠屋の米ざる

米とぎざる


お米の消費量がだんだんと少なくなってきちゅうそうですけんど、やっぱり日本人として生まれた喜びは炊きたてのアツアツのご飯ですろう。おかずとして頂く食材にしても、古くからずっと育まれてきたものには、ご飯と一緒に食べてこそ美味しいものが多いようです。別にお米が不足している時代でもないですけんど、お米が豊作だとやはり嬉しいし、新米の季節は毎年楽しみにしちょります。又、仮にそうでない方でも、どこまでも続く田んぼに黄金色にたわわに実る稲穂や、そよ風に揺られる光景を目の当たりにされますと、何か豊かな気持ちになったり、安らいだ心持ちになるのは、ずっと稲作をしてきた日本人ならではと思うのです。


そんな主食である美味しいお米を炊きあげるのに欠かせない竹の道具と言えば米研ぎざるぜよ。お米を優しく洗えるように竹ヒゴを丁寧にしつらえて、細かい竹の粒が落ちないように、しっかりと編み目を詰めた竹ざる。長くお使いのお客様からは、米研ぎざるを使うて炊いたご飯は美味しいと言うていただきます。


蕎麦職人さんが使う、竹製の蕎麦振りでも、金属製のものなど色々あるようですが今でも昔ながらの竹編みが好まれるのは、蕎麦をキズつけないからとも言われますきに米研ぎざるにも、そのような自然素材ならではの良さがあるように思うちょります。何を隠そう竹はイネ科の植物です、お米と相性がエイのは当然ながぜよ。けんど、それでなくとも竹は竹の手触りの良さ、見た目の清々しさもあり、台所にひとつ竹籠があれば気持ちが、ちっくと豊かになるように思うがです。


米研ぎだけではなく野菜や麺類など食材の水きりにも使えて重宝しますが、長く使うほどに青々とした竹の色が落ち着いた色目に変わり、渋い風合いになってくるのが魅力の一つでもあるのです。


旅館のような部屋の秘密

のし竹皿


小学校の低学年の時に新しい自宅が建ったがです。一階の家の北側に一番端っこに自分の部屋が出来て、こじゃんと嬉しかった事を昨日の事のように覚えちょりますぜよ。鉄筋コンクリート二階建て、度々襲ってきた台風にもびくともしない丈夫な作り、屋上からは西に虎竹の古里、焼坂の山がそびえ、東には貨物船の行くのが見える須崎湾が眺められる景色の良さに、子供心にも胸が躍る気分やったがです。


この家には二階にもキッチンとトイレを設えちょりました。祖父母が暮らすという事もあったろうけんど、それにしても二階の一番手前の和室の作りが凝った床の間や違い棚もあって、自宅と言うよりも、まるで旅館か何かの部屋のようにも思えて、何か不思議な感じがずっとしよりましたぜよ。


その秘密が解けたのは、ずっと後になってから、そう言えば...ああやったにゃあと納得した事ながですが、虎竹の里は昔からお遍路さんの難所と言われるくらい山に囲まれた交通の不便なところやったがです。今では24時間営業のコンビニも何とかありますけんど、その頃、周りには何もなく買い物に行くスーパーも車で山越えで行きよりました。もともと竹虎は120年前に大阪で創業した会社ですし、取引先様は昔から県外の問屋さんばかり。そしてそんな問屋さんが頻繁に来社されよりましたので、おもてなしをせねばなりませんが周りに何もない竹虎では、自宅にお招きして食事や宿泊をしていただくのが常やったがです。


実は、こんな商習慣は竹虎に限った事ではなく、交通不便で宿泊施設も今のようになかった昔の日本では、来客を自宅でもてなすのは当たり前の事やったようです。それは言葉で知った訳ではなく古いお付き合いの会社や職人さん宅に行くと、奥様が前日から仕込んだ地元料理を出してくださったり、料理屋さんからとった料理をふるまってくれる事から、自分の祖母や母のしていた幼い日を紐解くように思い出したがです。


大阪や京都からの社長さんを田舎料理でもてなして来ましたので、今頃になって気づくけんど祖母の料理は、まっこと旨かった。大阪に数軒あった料理屋の娘と言う事もあったろうけんど、どうして、こんな田舎やに作るご飯が洒落ちゅうし、気品やさえ感じるろうか?こんな謎が解けたのも後になってからの事やちや。


母の水屋には、まっこと珍しい竹細工の皿や食器類がありますぞね。これも、その当時のお客様にお出しするための名残、どう考えても家庭用らしからぬ、よそ行きの顔をした竹細工があるにゃあ。昔の竹製品は今とは趣が違うて手の込んだものが多くて楽しいがです。沢山の家の台所で竹が花形やった頃の往年のスター選手たちとでも言うろうか、これは近いうちに、ゆっくりと全部取り出して、ひとつひとつ見せてもらいたいと思いゆうがですぞね。


二度目のステファン(Stefan Diez)さん

Stefan Diez、Wataru Kumano、大谷宗平


前回は雨ばかり降り続いていた8月に来られていた、ドイツ人デザイナーのステファン(Stefan Diez)さんが、晩秋の高知に再度お越しいただきましたぜよ。


実は夏以降に母国におられるステファンさんとやり取りをして竹をお送りしたり、構想のまとまったデザインを頂戴したりして、ある程度の形に試作してみた物が出来上がっちょったがです。今度はそれを元に改めて製品作りをしていく手はずやったがぞね。


竹虎四代目(山岸義浩、YOSHIHIRO YAMAGISHI)、Stefan Diez、Wataru Kumano、大谷宗平


はじめから、一つの形にする事すら結構大変やと思うて、困難を予測してはいましたけんど、竹文化とはあまり馴染みのないヨーロッパの方でもあり、モノ作りの第一線でずっと活躍されゆう方もありますので、竹という素材そのものにも、かなり関心もあられるのだと思います。当社から届けさせてもろうた竹材を自分で扱い特性を知り、前回竹虎に来られた時に見て頂いた竹加工の技術もよく考慮した上で、しっかりした形を模索しているのが伝わりますぞね。


Stefan Diez、Wataru Kumano


そんな中でも特に目を見張った技術がありましたちや。これは少なくとも自分の知る限り日本の竹業界には、全くなかったやり方ですし、実現することができれば感性の高い、一つステージの上がった竹を、皆様にご覧いただける事にもなるのではないかと思うちょります。応用ができそうなので色々な横の広がりも考えられ面白いですぞね。ドイツのモノ作りの片鱗をほんの少しですが垣間見たような気もして、まっこと、さすがとしか言いようがないがです。


竹虎、Stefan Diez、Wataru Kumano、大谷宗平


しかし、とは言うても今まで扱った事のない素材でもあり、今まで形にした事のないものであり、それでなくとも難しい素材の竹ですので、そうそう簡単に事が進むことはないのです。


竹と木材との大きな違いは中が空洞になっている事ですろう。このため重量が軽く、利便性もあり大小色々なモノに活用されてきた反面、使い方によっては耐久性や強度には劣る部分は否めませんちや。そこで、一歩進んでは立ち止まり、一歩進んでは立ち止まる事を繰り返し、試作を続ける職人も含めて重苦しい空気が流れる事が多くなりよります。


竹虎本社工場Stefan Diez、Wataru Kumano、大谷宗平


近く寄りすぎて、その問題と向き合うと見えない事も、一歩さがって大きな俯瞰した視野で見直してみますと、もうすでに心が躍り出しそうなくらい素晴らしい成果が上がりつつある事に気がつきますぜよ。まず、一つの形になっていく事が第一段階であり、クリアせねばならない課題が多々ありますが、竹の悩ましい所は、それからの課題が更に多くやっかいであることですろうか。まだまだ道のりは果てしないくらい長いと思うちゅうがです。


竹屋の絨毯?

竹編み


土曜日は休みですので広々とした竹ばっかりの工場が静まりかえって、これは、これで実はなかなか好きながです。金曜日の夕方から、あちこちに広げて乾燥させているのは、梅干し用のエビラ籠に使う竹の網代編みながぜよ。


新しい竹を使うて編み上げられちょりますので、まだまだ生しく、竹表皮を使うた部分は青々として気持ちがエイもんです。けんど、ご存じない方が見られたら一体何と思いますろうか、風通しのよいようにの下に枕木を敷いちょりますけんど、さすが竹専門の工場じゃ、竹の絨毯を一面に敷いちゅうにゃあ!そう思われる方もおられるかも知れんぜよ。


土用干し


こうやって編まれた竹が木枠をつけて仕上げをされてから、また、来年のシーズンにはこうやって縁側や、いえいえ都会のマンションやったらベランダですにゃあ、吊られたり、置かれたりして、美味しい梅干し作りにお役にたてるがですちや。


おっと土用干しだけではないですぞね。料理で余った野菜などを干し野菜にされる方も増えているようです。野菜を無駄なく捨てる事なく利用できますし、なんと干した方が旨味や香り、栄養価が高くなるそうぜよ。高知県などでは、大根やニンジンを干しているのは、まっこと、いつもの当たり前の光景ですぞね。通りがかりに良く目にしますけんど、都会のベランダでも、洗濯物の横に普通に並ぶようになったらエイですにゃあ。